「頭は真っ白、顔は真っ赤」から始まった1年目。オリックス・バファローズ スタジアム・ボイス YUTOが語る、もがき続けたシーズンと“花を添える”覚悟

オリックス・バファローズ スタジアム・ボイスYUTOさん
©ORIX Buffaloes

取材・文:ベースボール・コンパス編集部
写真提供:オリックス・バファローズ

2026年シーズンからオリックス・バファローズのスタジアムMC「スタジアム・ボイス」を務めるYUTOさん。小学生の頃からバファローズが大好きだった“いちファン”が、23歳で球団の新たな声という大役を担いました。そんなYUTOさんに、1年目で直面した壁や、もがきながら見つけた変化、球場の声として大切にしている想いを聞きました。

▼YUTOさんプロフィール
YUTO(ゆうと)╱2002年12月19日生まれ、兵庫県出身。小学生の頃から京セラドーム大阪に通うバファローズファン。アメリカの大学で磨いた英語力を武器に、200倍を超える選考倍率のオーディションを勝ち抜いて、2026年シーズンから球団史上最年少でスタジアム・ボイスに就任。同年3月4日のオープン戦でデビューした。

目次

「体感はまだ10試合くらい」。悔いが残った1年目

──スタジアム・ボイスとして1年目を走り抜けた今の、率直な心境を聞かせてください。

声の仕事をした経験がなかったので、日々課題と向き合い続けられたことは、よかったと思います。ただ、すべての課題をクリアできたという実感はあまりなく……。自分の中で「完成」と言えるレベルに持っていけないまま終わってしまったシーズンでした。正直、悔いが残る部分もあります。

──本拠地最終戦を終えたときは、どんな気持ちでしたか?

最終戦に臨む前は「終わったー!」とホッとするのかなと思っていました。でも、意外とそうではなく、自分のアナウンスが次のレベルに上がる前に「あ、終わっちゃったな」という気持ちでした。本当にあっという間で、体感ではまだ10試合くらいしかしていない感覚でした。

オリックス・バファローズ スタジアム・ボイスYUTOさん
©ORIX Buffaloes

──バファローズのスタジアム・ボイスという大役に就いて、周りの方からの反響も大きかったのではないですか?

小学生の僕がテレビに向かって絶叫しながら応援していたのがきっかけで母もバファローズファンになったんですが、スタジアム・ボイスの合格を報告したときは、とても喜んでくれました。

友人にはオープン戦初日に発表されるまでずっと黙っていたので、ニュースを見た仲間から「どういうことやねん!」と連絡が来ました(笑)。たくさんの人が喜んでくれたのは本当にうれしかったですね。

「スタジアム・ボイス」は、YUTOさんの就任に合わせて作られた名称。ここには、YUTOさんの最大の魅力である「声」を生かし、スタジアムを象徴する声になってほしいという期待が込められています。

シーズン中もファンの方から「プレッシャーもあると思うけど、個性を出して頑張ってね」というお手紙をいただきましたし、ベルーナドームにバファローズ戦を観に行ったときには応援の声をかけてくださる方もいました。バファローズファンは本当に優しくて、よりこの球団が好きになりましたね。

記憶が飛ぶほど緊張したデビュー戦。初めて知った「声が吸われる」感覚

──ここからはデビュー時のことを聞かせてください。アナウンス初日までは、どんな準備をされたのですか?

デビューまで3カ月ほどあったので、バファローズ戦の実況でおなじみのフリーアナウンサー・大前一樹さんのアナウンススクールに通い、アクセントの基礎などを学びました。ファームのスタジアムアナウンサー・矢坂まりさんからも、交代の言い方や順番、選手が負傷したときのアナウンスまでみっちり教えていただきました。

──しっかり準備して臨んだ3月のデビュー戦の感触はいかがでしたか?

デビュー戦については本当に何も覚えていないんです。隣で矢坂さんが「今はこれを言うよ」「交代はこの順番で」と教えてくださったので、無事に終わったとは思うんですけど……。頭は真っ白、顔は真っ赤。マイクのタブを上げる手がプルプル震えていたことだけは覚えています(笑)。

──その日の様子は、球団公式YouTubeで拝見しました!

あまり見ないでほしいです(笑)。僕もまだちゃんと見られていなくて、開始30秒で「あ、これ見られへんわ」と止めてしまいました……。

そんなYUTOさんの初アナウンスの様子【球団公式YouTubeより】

──実際にやってみたからこそわかる難しさはありましたか?

難しさしかなかったです……。スピーカーを通して自分の声がどう聞こえるかは、やってみないとわからなかったですし、どんな交代が来るか直前までわからない中で、審判さんから交代の連絡が入ったら、伝えてもらった内容をテンポよく喋らないといけません。そのバタバタ感も、やってみて初めてわかりました。

あとは、球場にたくさんのお客様がいらっしゃると、声が吸われる感じがありました。自分の声が通りにくい瞬間があって「もっと声量を出せるようにならないと」と痛感しました。

もがきながら掴んだ、小さな変化。でも、「もっとよくできる」

──その難しさに、どう向き合ってきたのでしょうか?

自分が思う声とスピーカーを通してお客様に届く声は違うので、録音した声を聞き返すことを続けています。家族が観に来たときは動画を撮ってくれるので、それも見返していますね。

具体的に変えたのは、「ファウルボールにご注意ください」のようなアナウンスです。文言を読むだけなら誰でもできますが、スタジアム・ボイスはお客様に伝えることまでが仕事。録音を聞いたら、ただ読んでいるだけで「気をつけてね」と言われている感じがしませんでした。

京セラドーム大阪のアナウンスブースは三塁側の客席のすぐ後ろにあります。そこで、目の前にいるお客様を見ながら、その方に話しかけるように意識しました。まだまだ完璧ではないですが、改善されている感触はあります。

オリックス・バファローズ スタジアム・ボイスYUTOさん
©ORIX Buffaloes

──試行錯誤のなかでアナウンスも進化しているんですね。ほかに、シーズン序盤と終盤で変わった点を教えてください!

「タメ」ですね。無音の部分も大事にできるようになったのは終盤かなと思います。序盤は「Batting first, in the left field, Ryoma Nishikawa」という文言も、焦ってタメなしで言い切っていました。それが終盤では、タメや抑揚を少しずつ混ぜながら言えるようになりました。

本拠地最終戦では山田修義投手と西野真弘選手の引退セレモニーがあって、かつてバファローズでプレーし、現在は北海道日本ハムファイターズにいる山﨑福也投手が花束を贈呈する場面がありました。そういうときは名前を言う前にタメを作ったほうが、お客様も「え、誰かすごい人が来るの?」と期待感が高まるじゃないですか。

序盤にはできなかったことが、終盤には少しできるようになりました。……ただ、手応えは本当にないんですよ。もっともっと、よくできると思っています。

主役は選手とお客様。自分は“一歩引いて、そっと声で花を添える”

──この1年で、特に印象に残っている試合を教えてください!

本当はデビュー戦と言いたいところですが、記憶がないので嘘になってしまいます(笑)。一番は、6月9日の東京ヤクルトスワローズとの交流戦です。最終回に代打の杉本裕太郎選手が、キハダ投手からサヨナラタイムリーを打った劇的な試合ですね。

僕は小学生の頃からバファローズファンで、選手がどんな経緯で球団に入り、どんな苦労を乗り越えてその舞台に立っているのかをずっと見てきました。そのストーリーを踏まえてアナウンスできるのは本当にうれしいですし、気持ちも入ります。サヨナラのように気持ちがグッと高まる場面で、ファンの皆さんと心を一つにしてアナウンスできるのは光栄です。

──そうした瞬間の空気に寄り添うのがスタジアム・ボイスだと思います。YUTOさんが考える、球場にスタジアム・ボイスがいる意義を聞かせてください。

人前で喋る仕事ではありますが、主役は選手ですし、お客様に一番観ていただきたいのは試合です。すでに盛り上がっている空間に、僕がズケズケ入り込んで「もっともっと!」というのは違うと思っています。一歩引いて、そっと声で花を添える──。それが僕らの存在意義かなと思います。

オリックス・バファローズ スタジアム・ボイスYUTOさん
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このオフでしっかり振り返り、来シーズンはレベルアップしたアナウンスを

──このオフシーズンに取り組みたいことはありますか?

シーズンの途中から「喉が疲れてきたな」と感じる時期があったので、発声を一から見直したいです。早く来シーズンを迎えたいというよりは、この1年でできなかった部分を全部整理して、アナウンスを次のレベルに引き上げたうえで2年目に臨みたい気持ちが強いですね。

──来シーズンのYUTOさんのアナウンスが、ますます楽しみになりました! 最後に、野球ファンの方たちにメッセージをお願いします!

まずは2026年シーズン、たくさんの応援を本当にありがとうございました。つらい時期や苦しい瞬間にも元気をくれるのが、バファローズです。2027年シーズンも優勝・日本一に向けて、僕も全力で声を出します。ファンの皆さんも一緒に応援していただけたらうれしいです。

そして、バファローズ以外のすべての野球ファンの方も、ぜひ球場に足を運んでください。京セラドーム大阪で、選手の熱い気持ちや痺れるプレーを一緒に目の当たりにしましょう!

オリックス・バファローズ スタジアム・ボイスYUTOさん
©ORIX Buffaloes

京セラドーム大阪の新たな声として1年目を駆け抜けたYUTOさん。早くも目線は来シーズンに向いており、さらなるレベルアップを図っています。そんなYUTOさんのルーキーイヤーは「Buffaloes蔵出しノート」でも見ることができます。来シーズンは京セラドーム大阪でバファローズの熱い試合と、そのシーンに花を添えるYUTOさんのアナウンスに注目しましょう!

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